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?Aの活動については、ボランタリー・オーガニゼーションのガバナンス機能を高めるための活動であり、組織管理についての助言、資金集めの方法、法的な問題への対応、スタッフの研修など幅広い活動を行っている。この活動はある意味で会員となっている団体へのサービスとして重要であるが、会員となっている団体と協力してさらに地域のボランタリー・オーガニゼーションに対する活動として展開されている。
?Bの活動としては、調査・研究、その成果の出版等であるが、NCVOの出版リストは膨大であり、その中に様々な調査・研究活動の成果が示されている。NCVOはアンブレラ組織としてイギリスでは重要な位置を占めているが、そのためボランタリー・セクターの全体を見渡した調査・研究が数多くある。例えば、『ボランタリー・オーガニゼーション−その規模と助言ニーズ』’3)を見てみると、914の全国的なボランタリー・オーガニゼーション(416の会員団体を含む)と201の自治体の担当部局に対して電話アンケートを行い、デスク・リサーチと個別ヒアリングによって資料を収集・分析し、その結果を示したもので、多くの団体の要望や意見が集約されている。このような大きな規模のボランタリー・オーガニゼーションに関する調査はイギリスでは初めてであったという。
NCVOの1994年度の収入を見てみると、484万ポンド{1ポンド約200円として換算すると約9億7千万円)であり、その内訳は政府からの補助金が104万ポンド(21%)、寄付収入114万ポンド(24%)、会費・出版等の収入72万ポンド(15%)、特別事業収入194万ポンド(40%)となっている。この数字を一般的な団体で見てみると、およそ3分の1が国・自治体からの補助金であり、個人を含めた寄付等が同じく3分の1あり、また残りの3分の1は事業や投資からの収益であるという。
最後に、事務局長のイサリントン氏(Stuart Etherington)へのインタビューで、イギリスにおけるボランタリー・セクターの将来について語ってもらったが、その中で今後もイギリスのボランタリー・セクターは拡大するであろうとのことであった。その理由として、第1にボランタリー・セクターが行っている活動が今後も十分に充足されることはないであろうから、パートタイムやボランティアによる活動、あるいは早期退職者による活動などによって拡大すると思われること、第2に政府と企業とボランタリー・セクターの関係から見て、政府の介入が限定される方向にあるので、ボランタリー・セクターがそのギャップを埋める必要性が高いこと、そして第3に児童虐待(チャイルド・アビューズ)や大量殺人事件などの社会的事件から判断すると社会のモラル構造が崩壊しつつあると考えられ、将来の社会的問題を解決する手法としてボランタリー・セクターは必要である。

 

 

 

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